
不妊治療を始めると、夫婦で同じ目標に向かって進んでいるはずなのに、なぜか気持ちがすれ違ってしまうことがあります。
「私は毎回の通院や検査でいっぱいいっぱいなのに、夫はあまり気にしていないように見える」
「治療について話したいけれど、夫にプレッシャーをかけたくない」
「タイミングを取ることが義務のようになってしまった」
「体外受精まで進むことについて、夫婦で意見が合わない」
「治療を続けるのか、どこまでステップアップするのか決められない」
このような悩みは、決して珍しいことではありません。
不妊治療は、検査や薬、通院などの「治療」だけでなく、夫婦それぞれの気持ちや仕事、生活にも影響します。
だからこそ大切なのは、夫婦がいつも同じ気持ちでいることではありません。
意見が違ったときにも、お互いの気持ちを確認しながら、一緒に治療について考えていくことです。
この記事では、不妊治療を夫婦で進めるために大切なことを、実際によくある場面を交えながらお話しします。
不妊治療では夫婦の気持ちに「温度差」が生まれることがあります
不妊治療を始めたからといって、夫婦が同じペースで気持ちが変化するとは限りません。
例えば、
妻:
「できるだけ早く検査を受けたい。原因があるなら早く知りたい」
夫:
「もう少し自然に任せてもいいんじゃない?」
このような違いが出ることがあります。
また、女性側は月経や排卵、通院、検査などを通して、毎月のように妊活を意識する機会があります。
一方で、男性は女性ほど治療を身近に感じる機会が少ないこともあります。
その結果、
「どうして私ばかり気にしているんだろう」
という気持ちにつながってしまうことがあります。
ここで大切なのは、どちらが真剣なのかを比べないことです。
夫婦であっても、不妊治療への向き合い方や感じ方が違うのは自然なことです。
不妊治療を夫婦で乗り越えるために大切な5つのこと
① 「治療のことを考える時間」を夫婦でつくる
不妊治療の話は、日常生活の中で突然始めると、どうしても重たい話になりがちです。
例えば、
「次の診察で先生にこう言われた」
「次は人工授精を考えた方がいいのかな」
と、その都度話すだけでは、夫婦のどちらか一方に負担が偏ることがあります。
そこで、あえて夫婦で話す時間をつくってみるのも一つの方法です。
例えば、
- 今月の治療について
- 次の受診で確認したいこと
- 仕事との調整
- 治療費について
- 次のステップについて
などを、落ち着いて話します。
毎日治療の話をする必要はありません。
むしろ、「妊活の話をしない時間」も夫婦には必要です。
妊活だけが夫婦の会話になってしまわないように、治療以外の時間も大切にしましょう。
② 「やってほしいこと」を具体的に伝える
「もっと協力してほしい」
と言われても、何をすればいいのか分からないことがあります。
例えば、
「次の診察の日は一緒に来てほしい」
「検査について一緒に調べてほしい」
「治療費について一緒に考えてほしい」
「排卵日だけを意識するのではなく、普段から妊活について話したい」
など、具体的に伝えてみましょう。
「分かってほしい」という気持ちだけをぶつけるのではなく、
「私はこう感じている。だから、こうしてもらえると助かる」
と伝えることで、相手も行動に移しやすくなります。
③ 「誰の問題か」ではなく「夫婦の課題」として考える
不妊治療では、検査によって何らかの原因が見つかることがあります。
そのとき、
「自分が原因だった」
「自分のせいで治療が必要になった」
と、自分を責めてしまう方もいます。
しかし、不妊治療は「どちらが悪いのか」を決めるためのものではありません。
夫婦の妊娠を考える上で、どのような方法が適しているのかを確認し、必要な治療を選んでいくことが大切です。
原因が一つに特定できないケースもあります。
だからこそ、
「あなたの問題」ではなく「私たちの妊活」
という視点を持つことが、夫婦で治療を続ける上で大切になります。
④ 「治療のゴール」を一度に決めようとしない
不妊治療を始めると、
「いつまで続けるの?」
「人工授精は何回する?」
「体外受精まで進む?」
など、先のことまで決めたくなるかもしれません。
しかし、最初からすべてを決める必要はありません。
例えば、
「まずは検査を受けてみよう」
↓
「結果を見て、タイミング法を考えよう」
↓
「何周期か試して、次の治療について相談しよう」
というように、その時点で必要なことを一つずつ考える方法もあります。
治療への不安が大きいときほど、「この先全部どうするか」ではなく、
「今、夫婦で決めることは何か」
に目を向けてみましょう。
⑤ お互いの「しんどさ」を比べない
不妊治療では、女性側に身体的な負担が多くなる場合があります。
一方で、男性側も検査や採精、仕事との調整、治療費への不安など、別の形で負担を感じることがあります。
ここで、
「私の方が大変」
「あなたは何もしていない」
と負担を比べ始めると、夫婦の会話が難しくなってしまいます。
大切なのは、
「どちらが大変か」ではなく、「今、お互いに何が大変なのか」
を知ることです。
例えば、
「私は通院のたびに仕事を調整するのが大変」
「あなたは仕事が忙しくて、治療のことを考える余裕がないんだね」
と、お互いの状況を言葉にしてみるだけでも、見え方が変わることがあります。
「タイミングを取ること」が負担になったとき
妊活を始めたばかりの頃は、
「排卵日が近いからタイミングを取ろう」
と自然に考えていたのに、何度も続くうちに、
「今日はタイミングを取らないと」
という義務のように感じてしまうことがあります。
特に、排卵検査薬を使ったり、基礎体温を記録したりしていると、性生活そのものが「妊娠するための行動」になってしまうことがあります。
その結果、
「排卵日になると夫婦の雰囲気が悪くなる」
「タイミングの日に限って仕事で疲れている」
「妊娠のことを考えずに夫婦で過ごしたい」
という状況になることもあります。
そんなときは、妊娠のためのタイミングだけではなく、妊活とは関係なく夫婦で過ごす時間も意識して持つことが大切です。
「映画を見る」
「一緒に食事をする」
「休日に出かける」
など、治療とは関係のない時間を過ごすことも、夫婦関係を守るためには大切です。
治療のステップアップで意見が合わないとき
不妊治療では、タイミング法から人工授精、体外受精など、治療方法について考える場面があります。
ここで夫婦の意見が一致しないこともあります。
例えば、
妻:
「年齢のこともあるし、早めに体外受精を考えたい」
夫:
「もう少しタイミング法を続けたい」
このような違いです。
この場合、
「どちらが正しいか」
を決めようとすると、話し合いが難しくなります。
まずは、
- なぜその治療を選びたいのか
- 何が不安なのか
- 費用についてどう考えているのか
- 身体的な負担についてどう感じているのか
- いつ頃までに次のステップを考えたいのか
を、それぞれ話してみましょう。
そして、必要であれば医師から治療方法や選択肢について夫婦で説明を受けることも一つの方法です。
夫婦だけで結論を出そうとせず、医学的な情報を確認した上で話し合うことで、考えやすくなることがあります。
夫婦だけで抱え込まないことも大切です
不妊治療は、夫婦だけで頑張らなければならないものではありません。
治療について分からないことがあれば、医療機関に相談しましょう。
例えば、
「今の治療をこのまま続けていいのか」
「次のステップに進むタイミングが分からない」
「検査結果について夫婦で理解したい」
など、一人で悩み続ける必要はありません。
また、治療による精神的な負担が大きくなっている場合には、医療機関や専門的な相談窓口などに相談することも選択肢になります。
夫婦で頑張ることと、夫婦だけで抱えることは同じではありません。
必要なときに周囲の力を借りることも、妊活を続ける上で大切なことです。
よくある質問
Q. 夫が不妊治療にあまり積極的ではありません。どうしたらいいですか?
まずは「協力してほしい」と伝えるだけではなく、何に困っているのか、何をしてほしいのかを具体的に話してみましょう。
また、男性側は不妊治療について知る機会が少なく、何をすればいいのか分からない場合もあります。
一緒に受診して医師から説明を聞くことも一つの方法です。
Q. 不妊治療のことで夫婦喧嘩が増えてしまいました。
治療が長くなると、妊娠への期待や不安、通院、仕事、費用など、さまざまな負担が重なることがあります。
まずは「治療の話をしない時間」を意識して作ってみましょう。
夫婦の関係を守ることも、不妊治療を続ける上で大切です。
Q. 夫婦で治療方針が違う場合はどうすればいいですか?
それぞれが「なぜその治療を希望するのか」「何が不安なのか」を話してみましょう。
その上で、医師から治療の選択肢やメリット・デメリットについて説明を受け、夫婦で考えることもできます。
Q. 不妊治療は女性だけが受診すればいいのでしょうか?
不妊の原因は女性側だけにあるとは限りません。
男性側の検査が必要になることもあるため、夫婦で妊娠について考える場合には、男性側も検査について知っておくことが大切です。
受診方法や検査内容については、医療機関に相談してみましょう。
妊活中のご夫婦へ
不妊治療をしていると、
「早く妊娠したい」
「今度こそ妊娠できるかもしれない」
という期待がある一方で、
「また生理が来てしまった」
「治療を続けるのがつらい」
「周りの妊娠報告を素直に喜べない」
など、さまざまな気持ちになることがあります。
そんなとき、夫婦のどちらかが落ち込んでいても、もう一方まで同じ気持ちになる必要はありません。
大切なのは、同じ気持ちになることではなく、お互いの気持ちを知ろうとすることです。
「今日はちょっと疲れた」
「今月は治療のことを考えたくない」
「次の受診、一緒に話を聞いてほしい」
そんな小さな言葉でも構いません。
不妊治療は、妊娠という一つの目標だけに目を向けてしまいがちですが、その過程で夫婦がどう過ごすかも大切です。
治療の方法だけでなく、夫婦が無理なく治療を続けられる方法を一緒に探していくことも、不妊治療では大切なことです。
まとめ|夫婦で同じ気持ちになることより、話し合えることが大切
不妊治療を夫婦で乗り越えるために大切なのは、いつも同じ気持ちでいることではありません。
意見や気持ちが違っても、
- 治療について話す時間をつくる
- やってほしいことを具体的に伝える
- 「どちらの問題か」ではなく夫婦の課題として考える
- 治療のゴールを一度に決めようとしない
- お互いの負担を比べない
- 妊活とは関係のない夫婦の時間も大切にする
- 必要なときは医療機関に相談する
ことが大切です。
「私ばかり頑張っている気がする」
「夫と治療についてうまく話せない」
「次の治療に進むかどうか迷っている」
そんなときは、夫婦だけで答えを出そうとしなくても大丈夫です。
医療機関で治療について一緒に説明を受けることで、夫婦で考えるための材料を増やすこともできます。
不妊治療は、妊娠するための治療であると同時に、夫婦でこれからのことを考える時間でもあります。
お互いを責めるのではなく、「二人にとって無理のない妊活とは何か」を一緒に考えていきましょう。

医療法人社団 中林産婦人科クリニック 理事
中林レディースクリニック 院長
<資格・免許・役職等>
医学博士
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
日本生殖医学会 生殖医療専門医 ほか
<研究分野・専門分野>
生殖内分泌(卵巣機能)、周産期(胎盤機能)
神戸大学ならびに米国スタンフォード大学で卵巣機能、卵胞の成長について研究を重ねた。とくに排卵を促す黄体ホルモンの受容体の研究は高く評価され、2012年ノーベル化学賞をとられたDr. Kobilka との共著が2編ある。さらに、1930年に発見されてその受容体が不明であった、妊娠分娩に関わるホルモンのリラキシンの受容体を同定してサイエンス誌に掲載された。また甲状腺ホルモン以外に新しい甲状腺を刺激するサイロスティミリンを発見して話題になった。胎盤機能に関しては、神戸大学で中林グループの長として、6人の医学博士の学位の指導を行い、一流雑誌に掲載された。
<メッセージ>
スタンフォード大学と神戸大学で生殖医療の研究をしてきた高い専門性を背景に、生殖専門医として確かな治療を実践してきております。当院は先進医療を行える施設として、日々不妊治療と向き合っています。
姫路駅直結のフェスタビル北館2階の全フロアに不妊治療に特化した機器を導入し充実した設備で、質の高い不妊治療を患者さんにしっかりと寄り添って実践していきたいと思っております。
